腰痛の治し方

皆様、こんにちは。脊椎外科医の遠藤です。

今回は、腰痛についてお話したいと思います。

目次

腰痛とは?

『腰痛』とは、文字通り腰の痛みのことですが、ほとんど全ての方が、多かれ少なかれ経験したことがあると思いますが、まだまだ謎が多い痛みなのです。

原因や治療なども様々であり、根拠のない民間療法なども、はびこっているのが現状です。

医師によっても、治療法がバラバラということも、ざらにあるかと思います。

病院やクリニックにかかっても、結局腰痛が治らず、がまんして生活している人も多いのではないでしょうか。

私も脊椎(せぼね)の治療をしているので腰痛は頻繁に遭遇します。

たしかに腰痛治療は本当に難しいです。

なぜなら腰痛の原因がとてもたくさんあるためです。

せぼねが原因のものから、そうでないものまで多岐にわたっていて、それらをひっくるめて腰痛という言葉でまとめあげられているのです。

本屋に行けば腰痛に関する本は数えきれないくらいあります。そして我々医療従事者用の専門的な教科書や学術書も多数存在しております。

それでも、腰痛は世の中からなくなりませんし、治療法も、はっきりと確立していないのが現状です。

そうした中、『腰痛診療ガイドライン』という、専門家の先生達が、過去の膨大なデータや論文を吟味し、腰痛に効果がありそうな治療なのか効果がなさそう治療なのかをまとめ上げたものがあります。

確実に有効な治療と言い切れない表現が多いのですが、適当な治療をするよりは、ガイドラインに沿って治療を行なった方が、確実に患者さんに有益だと思います。

このガイドラインを簡潔にまとめてみた上で、私なりの臨床経験からの意見も少し加えてみました。

病院での治療のことだけでなく、腰椎バンド(コルセット)やマッサージ、体操などについても触れていますので、日常生活においてもある程度参考になるのかと思います。

腰痛の種類(タイプ別)

まず、腰痛には、3種類のタイプが存在します。

①神経症状のない腰痛 ②神経症状のある腰痛 ③重篤な脊椎疾患のある腰痛に分類されます。

以下、それぞれについて解説します。

ここでいう神経症状とは、足のしびれや痛みのことです。坐骨神経痛なども含まれます。

つまり、足のしびれや痛みがない純粋な腰痛のことですね。

多くの腰痛はこのタイプなのですが、診断や治療が難しいのもこのタイプなのです。

今回はこのタイプの腰痛についてメインに解説してまいります。

足のしびれや痛みを伴う腰痛です。

このタイプは、椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症が多くを占めています。

この2つの疾患に関しては、別の記事で詳しく解説していますので今回は省きます。

興味がある方はこちら⬇︎からどうぞ。

せぼねに大きな問題がある腰痛です。

このタイプの特徴としては、痛みが強烈で、安静にしていても腰痛が続くことが多いです。

せぼねの骨折、腫瘍、感染などがこのタイプに含まれます。

診断には、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査が必須なので、強烈な痛みが続くようなら、必ず画像検査ができる病院を受診してください。できれば専門医がいてMRIまで撮れる病院が望ましいです。

腰痛にはこの3タイプがありますが、今回は一番多い、①の『神経症状のない腰痛』をメインに解説してまいります。

腰痛の種類(期間別)

腰痛は、期間によっても2種類に分類されます。

発症から4週間未満のものを『急性腰痛』といいます。

発症から3ヶ月以上のものを『慢性腰痛』といいます。

急性腰痛と慢性腰痛とで、治療法や治療の有用性が変わってきますので、この2つを分けて考える必要があります。

以下ガイドライン解説でも、急性と慢性で多くは分けています。もし急性も慢性もついていない、ただの腰痛という表現をみましたら、両方に共通している治療と思っておいて下さい。

腰痛の自然経過はどのようであるか

ガイドライン要約

・急性腰痛の自然経過は、自然軽快することが多く、概ね経過は良好

・慢性腰痛の自然経過は、急性腰痛に比べて不良

・心理社会的要因は、腰痛を遷延化させる

・身体的、精神的に健康な生活習慣は、腰痛の予後によい

ガイドラインでは、上のようにまとめられています。

これを、簡単にいうと、

痛めて間もない腰痛は、放っておいてもよくなる。

経過が長い腰痛は、なかなかよくならない。

ストレスがあると腰痛が長引く、またストレスがない生活をすると腰痛がよくなる

となります。

ストレスが腰痛を長引かせてるなんて意外に思いませんか。

このストレス社会の現代で難しいかもしれませんが、ストレスを減らすように心がけることも大事なのかもしれません。

腰痛と生活習慣と関係があるか

ガイドライン要約

・低体重あるいは肥満のいずれでも腰痛発症のリスクと弱い関連が認められる。

・喫煙と飲酒は、腰痛発症のリスクや有病率との関連が指摘されている

・日常的な運動実施群に比べ、普段運動していない群に腰痛発症リスクは増大する

・腰痛の予防には健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が推奨される

つまり、

肥満、喫煙、飲酒、運動不足、ストレスが、腰痛の発症のリスクを上げるとのことです。またストレスが出てきましたね。

肥満や運動不足は何となくわかるのですが、喫煙、飲酒もリスクが上がるとのことです。

さらに低体重も腰痛リスクというのは、意外でしたね。

腰痛と職業の間に関係はあるか

ガイドライン要約

・身体的負荷の大きい重労働は、腰痛発症の危険因子と考えられる

・仕事や職場における心理社会的因子は、腰痛発症や予後に関連する

重労働は、たしかに腰に悪そうですね。

特に重量物を持ち上げる作業を伴うものが、腰痛発症のリスクを上げるとのことです。

これは納得ですね。

また職場でのストレスも腰痛リスクを高めるとあります。またストレスのことが書かれてますね。

腰痛の治療は安静よりも活動性維持のほうが有用か

ガイドライン要約

急性腰痛に対しては、安静よりも活動性維持の方が有用である

これはどういうことかと言うと、急性腰痛(発症から4週間以内の腰痛)に関しては、安静にしているよりも、痛みに応じて、ある程度動いたほうが早く治るとのことです。

安静を指示することで、患者さんが腰を過度に守ろうとする回避行動を生み、腰痛の再発や慢性化につながるとの指摘もあるようです。

ただし、確実に、安静にしているより動いた方が早く治る とまでは断定まではできておりません。この2つに大きな差はないとの意見もあるようです。

個人的には、痛いのを我慢して動く必要はないけど、動けるのにあえて安静にしている必要はないかなと思います。

ずっと安静にするとなると、生活も制限されて大変だと思うので、少し痛みがあっても動けるなら動いていいのかなと思っております。

腰痛に薬物療法は有用か

ガイドライン要約

薬物療法は疼痛改善や機能改善に有用である

薬物療法つまり内服薬での治療は、腰痛に有用とのことですが、ではどういった内服薬が有効なのでしょうか。

急性腰痛と慢性腰痛に分けて解説いたします。

ガイドラインでは、急性腰痛で最も推奨されている内服薬は、非ステロイド系抗炎症薬でした。

英語でNSAIDS(エヌセイズと読みます)と言われることが多いのですが、よく知られているものとしては、ロキソニンボルタレンなどでしょうか。

市販もされていて「イブ」「バファリン」「ノーシン」「セデス」などが有名です

一度は、飲んだことがある方が多いのではないでしょうか。 私もまずはこれらの薬を最初に処方することがほとんどです。

この非ステロイド系抗炎症薬に加え、筋肉を柔らかくする薬であったり、痛みを抑える神経の働きを高める薬などを組み合わせることがありますが、これらの薬は、それほど急性腰痛への効果が高いことは立証されていないようです。

慢性腰痛の場合でも上記の非ステロイド系抗炎症薬はある程度有効ですが、急性腰痛ほどは有効ではないようです。

ガイドライン上、より推奨されているのが、この2つの薬です。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

弱オピオイド

『セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬』は、もともとは抗うつ薬なのですが、脳に伝わる痛みの信号を抑制する作用があり、慢性腰痛に有効であることが立証され、近年よく使われます。サインバルタという薬品名で処方されます。たまに嘔気、便秘、めまいなどの副作用が出ることがあります。

『弱オピオイド』は、もともとは、がんの疼痛の際に使われる痛み止めですが、慢性腰痛にも有効なことがわかっています。トラムセットまたはトラマールという薬品名で処方されます。これも嘔気、便秘、めまいなどの副作用がたまに出ます。

腰痛の治療として物理療法・装具療法は有用か

ガイドライン要約

腰痛の治療に対する物理・装具療法のなかには有用なものも存在するが、高品質な研究は少なく、推奨される治療法は限定的である

ガイドラインでは、

物理療法として、牽引超音波電気刺激温熱・寒冷治療

装具療法として、腰椎バンド(コルセット)インソール(靴底に入れる医療用中敷き) 

について、検証しております。

結論からいいますと、これらの全ての療法で、腰痛に有効であるという立証がされませんでした

だから全て無効であるとも言い切れませんが。

個人的には、コルセットに関しては、急性期の活動時に使用すれば有効な気がしますが、科学的立証はされていないようです。

腰痛にいいというクッション性のある靴の中敷きも全く科学的根拠はなかったようです。

牽引に関しては、すでにずいぶん前から有効性は疑問視されておりました。

電気刺激、温熱治療に関しては、まれですが、火傷などの有害事象の報告もあるようです。

この結果を踏まえると、これらの療法は、やってもいいけれども、頑張って通う必要はない という感じでしょうか。ましてや高額だった場合は、絶対にやめておいたほうがいいでしょう。

腰痛に運動療法が有用か

ガイドライン要約

・慢性腰痛に対する運動療法は有用である

・急性腰痛および亜急性腰痛に対してはエビデンスは不明である

運動療法は、慢性腰痛に対しては、腰の動く範囲を広げ、痛みも緩和するということが立証されています。ガイドラインでも慢性腰痛に対しては運動療法は強く推奨されております。

ここでいう運動療法とは、体幹筋力低下ストレッチのことを言います。

運動の詳細まで明確に示すデータまではなかったようです。

個人的には、水泳、水中ウォーキング、軽い筋トレ、有酸素運動などがいいのではないかと思います。

一方、急性腰痛での効果は不明とのことなので、急性期には無理してやらない方が無難でしょう。

腰痛にブロック治療は有用か

ガイドライン要約

腰痛患者に対する硬膜外ブロックは短期・中期的な鎮静およびADL改善効果をもたらす点で有用である

椎間板ブロックは短期・中期的な鎮静およびADL改善効果をもたらす点で有用である

とありました。ADLとは生活の質のことです。

ブロック治療とは、障害ある部位に針を刺し、直接麻酔薬を注入することで痛みを取る方法です。

腰の関節に打つもの、腰の神経に打つものなど、たくさん種類があります。

ガイドラインでは、腰痛に対して有効なのは、仙骨硬膜外ブロック椎間板ブロックとされています。

この2つについて解説していきます。

『仙骨硬膜外ブロック』は、腰痛に対して短期および長期のいずれも一定の効果があるとされています。

方法は、お尻の骨の隙間から、神経に向かって注射を刺して、麻酔薬を注入します

一方、

『椎間板ブロック』は、椎間板という腰の骨のクッションを役割をしている組織が障害されておこる腰痛(椎間板性腰痛といいます)の時に有効とされています。

椎間板性腰痛は、椎間板ヘルニアとは少し違います。

椎間板ヘルニアは、椎間板が飛び出してしまい、腰の神経を圧迫する病気です。

椎間板性腰痛は、この椎間板自体が劣化してしまい、クッションの役割ができなくなることで腰痛を引き起こします。

また椎間板が劣化すると椎間板に入り込む神経がなぜか過敏になってしまい、それも腰痛の原因となっているとも言われています。

椎間板ブロックは、椎間板に直接針を刺して、麻酔薬を注入する治療です。

椎間板性腰痛には、椎間板ブロックが有効とされていますが、画像検査だけでは、事前に確実に診断ができないことも多いので、椎間板ブロックをしてみて、初めて効くかどうかわかることも多いです。

腰痛に手術療法(脊椎固定術)は有用か

ガイドライン要約

・腰痛の原因が椎間板障害であると判明している場合は、脊椎固定術が疼痛の軽減に有用となる可能性がある。しかし手術適応は厳密に検討する必要がある

・慢性腰痛に対しす脊椎固定術の疼痛軽減効果は非手術治療と同等である

脊椎固定術とは、腰の骨同士を金具で固定する手術方法です。

脊椎固定術は、ブロックのところで説明した椎間板が原因の腰痛(椎間板性腰痛)と診断がついているものに対して有効と言われています。

しかし、椎間板性腰痛と診断するためには椎間板ブロックが必要であり、その椎間板ブロックで腰痛が改善した場合は、手術をする必要はありません。

そして、椎間板ブロックが全く有効でなかった場合は、もちろん手術をしてはいけません。

ですので、椎間板ブロックが一定期間は有効であったが、時間がたったらまた症状が戻ってしまった という状態が脊椎固定術の適応だと言えます。

脊椎固定術と椎間板ブロックとでは、患者さんへの負担度が雲泥の差ですので、手術適応につきましては、厳密に検討する必要があると考えます。

椎間板以外が原因の慢性腰痛には、脊椎固定術の適応はありません。

もし椎間板性腰痛でないのに、脊椎固定術を勧められたら断りましょう。

腰痛に代替療法は有用であるか

ガイドライン要約

本邦での代替療法のエビデンスは確立されていない

腰痛に対する代替療法には、徒手療法鍼治療マッサージナノ光線療法カイロプラクティックヨガレーザー治療などがあります。

基本的には、きちんとした過去のデータ、論文が十分にないため、ガイドラインでは腰痛に対しての有用性については立証できなかったようです。

しかし少数の報告はあり、若干参考になるかもしれませんので、少し解説していきます。

徒手療法とは、機械や物理器具を用いずに手を用いる療法ですが、急性腰痛、慢性腰痛ともに全く有用性は証明されておりません。

怪しい民間療法も多くあり、避けた方が無難でしょう。

中には、いかにも魔法の治療であるかのような誇大広告で巧みに患者さんの弱みにつけこみ、100万円以上の高額な値段を請求してくるところもあるようです。

こうした施術は、医学的には効果は全く証明されていない事実を知っておくべきではないでしょうか。

急性腰痛には有用であるいう報告もあるようです。

慢性腰痛には有用性は低そうです。

慢性腰痛に有用であるという報告があります。急性腰痛では控えた方がよさそうです。

慢性腰痛に有用であるという報告があります。

急性腰痛では控えた方がよさそうです。

ヨガも運動療法の1つと考えると合致します。

まとめ

今まで説明してきましたが、急性腰痛と慢性腰痛それぞれの有用な治療、悪化因子などについてまとめてみました。

活動性維持(動ける範囲で活動する)

非ステロイド系抗炎症薬(ロキソニン、ボルタレンなど)

仙骨硬膜外ブロック

・鍼治療

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(サインバルタ)

弱オピオイド(トラムセットまたはトアラセット)

運動療法

仙骨硬膜外ブロック

マッサージ

ヨガ

椎間板ブロック

脊椎固定術

肥満

喫煙

飲酒

運動不足

ストレス

以上、私なりにガイドラインを参考にして腰痛についてまとめてみました。

今回の記事が、腰痛でお困りの方に少しでもお役に立てれば幸いです。

おわり

遠藤への手術についてのご相談をご希望の方は、手術相談外来を予約してください。現状で、手術が必要かどうかの判断なども相談可能です。

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